監督:山崎達璽、原作:矢代静一、脚本:酒井雅秋、撮影:瀬川龍、照明:原由巳、美術:池谷仙克、録音:鴇田満男、音楽:野崎良太(Jazztronik)、出演:毬谷(まりや)友子、片岡愛之助、樹木希林、國村隼、佐津川愛美、2008年、77分。
江戸時代、とある処刑場。宮城野という名の女郎(毬谷友子)が処刑される寸前から始まり、それに至る話が回想として語られ、ラストにまたここへ戻る。
宮城野は、浮世絵師写楽を殺した犯人として捕えられたのであった。そのいきさつが物語のメインとなる。
宮城野は年増女郎であったが、かつて、道端で自分を拾ってくれた矢太郎(片岡愛之助)にいまだに惚れ込んでいた。・・・・・・
まだ30代前半の日大芸術学部出の監督だが、女の情念の世界に取り組んだ意欲作だ。
それだけに、情念の世界なるどろどろした愛憎劇が、すっきり整理され、いわばどろどろすべきが新鮮な世界に作られている。
予算の関係もあるだろうが、ところどころ模型めいたセットや書き割りを用いたのが、かえっておもしろい。
こうなると、どうしても演技達者な俳優を集めねばならず、その苦労のほうがしのばれるが、47歳にして乳房をあらわにする毬谷友子の抜擢は成功したし、樹木希林の女将役もよい。写楽の孫娘役佐津川愛美もフレッシュな色を添えている。
照明、演技への演出も、しかけを組んだ演出も斬新な志向があり、和の世界にまた一味違う興趣の音楽も効果的だ。
しかし結局、舞台が長い毬谷に負うところは多く、それを含め全体にバランスが取れているのが功を奏したとみる。
『海でのはなし。』ではちょろっとしか出ない毬谷であるが、この人、こういう役ははまり役だ。
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