監督・脚本:佐々木紳、主演:綾野剛、岡本奈月、忍成修吾、撮影:戸田義久、編集:充木裕昌、音楽:綾野剛、mr.a、2007年、93分。
勇(綾野剛)は、東京近郊のとある街(埼玉県本庄市あたり)で、キャンドル・アーティストをめざして日々を送っている。
ある日、高校の同窓会に行くことになるが、その前の日、留守番電話に見知らぬ女の子からのメッセージが入っていたので、同窓会に行く途中、そのメッセージにあった場所に行ってみる。・・・・・・
田園風景を背景に、ゆっくりとした時間ややさしさを表現する映画は多い。これもその一つだ。
留守番メッセージを残した女子高校生は失恋したばかりであったし、久しぶりに同窓会で会った元カノはパイロットとの結婚が決まっていた。親友は酒の飲めない病いにかかっていた。
地元で、自分の作ったろうそくを男爵いもと交換したり、芸術村の工房には仲間たちがいろいろと試行錯誤しているなかで、さりげなく挿入された同窓会という出来事の日は、勇には意識されないが、日常の延長線上にあるのではなく、もはや非日常の空間となっている。
地元での軽やかな服装は、同窓会に向かうときはミリタリー系のジャケットになっている。
同窓会から地元の駅に戻ると、ホームのベンチに腰かけてすすり泣く姿は印象的だ。
自分のあずかり知らないところで、高校時代の仲間や一人の高校生が、なにがしかの変化を遂げていて、そのことにほとんどふだん接触もなく、いきなり接触して敏感になるとき、無性に虚無的な空しさに襲われるのだろうか。
勇には、積極的にまわりを何とかしようなどという意志は見られない。だから、ろうそくの炎は、ベタなイミで、まわりを明るくするという勇のメタファではないだろう。
むしろ、火をともしながら少しずつ溶けていく姿、ひとり火をともす姿の美しさ・悲しさに、勇のありかたを暗示しているのだろう。
Life はドイツ語の Leben 同様、生命、生活、人生の意味を兼ねている。
ちょっとしたかかわりの変化と、やさしさゆえに、それにつられてナイーヴな心が揺れるとき、勇は生きていることの痛みを味わうのであろう。
定点カメラを多用し、セリフを少なくし、それも日常会話そのままのセリフを多くして、しっとりじっくり登場人物の心の襞の光と影を描き出している。
夜の外のシーンなど空気感もよく、ギターやチェロの音も効果的だ。
どうということもない映画だが、雰囲気で見る映画でもあり、ゆっくりめが好きな人にはオススメ。
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