映画 『地上(ここ)より永遠(とわ)に』

監督:フレッド・ジンネマン、脚本:ダニエル・タラダッシュ、撮影:バーネット・ガフィ、編集:ウィリアム・ライオン、音楽:ジョージ・ダニング、モリス・ストロフ (音楽監督)、主演:バート・ランカスター、モンゴメリー・クリフト、デボラ・カー、フランク・シナトラ、1953年、118分、原題:From Here to Eternity、配給:コロンビア映画


1941年夏、ハワイのスコフィールド陸軍基地に、プルーイット(モンゴメリー・クリフト)が転属してくる。久しぶりで馴染みのマジオ(フランク・シナトラ)と再会して喜ぶのもつかの間、その隊はボクシング部での優勝をめざすためにブルーイットの転属を許したにもかかわらず、彼はかたくなに部に入ることを拒んだため、いろいろな制裁を受けてしまう。

彼の上官、ウォーデン(バート・ランカスター)は、またその上官であるホームズとその妻カレン(デボラ・カー)の間が破綻しているのを知り、二人で逢い引きを重ねる。

一方、プルーイットはマジオに連れていかれたクラブで、ロリーン(ドナ・リード)と出会い、親しくなる。・・・・・・


ハワイという気候のよい環境で、規律の乱れや大人の恋も生まれては消えそうになるときに、日本軍の奇襲があり、彼らの運命も翻弄される。

5大スター以外にも、アーネスト・ボーグナインやジャック・ウォーデンの顔も見える。


戦時下の、それにしてはタガの緩んだ基地の兵隊の日常を舞台に、描かれたテーマは、二組の男女のせわしないが真剣な恋だろう。ラストは、ハワイから離れる船に、二人の女が乗り、ハワイ島を眺めるシーンで終わるからだ。


バート・ランカスターとデボラ・カーが、海岸で泳ぎ、波に抱かれながら戯れるシーンがよい。デボラ・カーのやや左右に離れた瞳と美貌が冴える作品だ。

登場シーンの多いのはモンゴメリー・クリフトだが、その若いカップルの清純な恋があるからこそ、いわば不倫であるバート・ランカスターとデボラ・カーの恋の深さが浮き出てくる。


特段笑うようなシーンもあまりないかわりに、ストーリーや映像にぎゅっと締まりがあり、誠実に製作されたようすがうかがえる。アカデミー賞がすべてではないと思うが、作品賞など8部門で受賞し、「ローマの休日」を出し抜いただけのことはある。


タイトルのこことはハワイであり地上であろうし、それぞれの愛は日本軍の奇襲の直前に終わりを告げんとするのであるが、その愛が、少なくとも、思い出としては永遠に、胸の奥に秘められていくことだろう、と理解できる。


「ゴッドファーザー」で、マフィアが映画会社に圧力をかけて、知り合いを映画に出させるという挿話がある。これが、この映画のフランク・シナトラだと言われている。



日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。