監督:成瀬巳喜男、脚本:菊島隆三、撮影:玉井正夫、編集:大井英史、音楽:黛敏郎、主演:高峰秀子、森雅之、仲代達矢、1960年、111分、モノクロ。
銀座のバーに勤める雇われママが、身近に、そして身の上に起こる出来事を通じて、なおひとり、あすに向けて生きていく。
そんな女の生きざまを、さりげないが完成度の高い演出と構図でみごとに描き出した作品。
主演は高峰秀子で、出演者ほとんどが名の知られた俳優ばかりだ。
このママの勤めるバーが二階にあり、階段を上がるときの心情は、それぞれの場合により違っている。
ストーリーの展開のテンポもよく、節度を保ったカメラで、夜の世界に生きる女を通じ、女の愛と悲しみをみごとに表現した大人の映画だ。
こういう映画に、二十歳くらいのときに出会っていたかった。 もしこの映画を、二十歳くらいの人間がいま観たら、どんな感想をもつのだろう。 そもそも、監督の名さえ知らなかったかも知れない。
かつて、成瀬巳喜男特集というのを、都内文京区にある三百人劇場という映画館で上映していた。『浮雲』『流れる』『放浪記』などもそこで知った。評論家と高峰秀子との対談もあった。とても懐かしい。
この三百人劇場も、並木座などと同様、消えてしまった都内の名画座だ。あのころの名画座で残っているのは、池袋の文芸坐くらいだ。今は新文芸坐となっている。
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