『赤い風船』監督・脚本:アルベール・ラモリス、撮影:エドモン・セシャン、音楽:モーリス・ルルー、主演:パスカル・ラモリス(アルベールの子)、1956年、36分、フランス映画、カラー、原題:Le Ballon Rouge
『白い馬』監督・脚本:アルベール・ラモリス、主演:アラン・エムリイ、1952年、40分、モノクロ、原題:Crin blanc: Le cheval sauvage
『赤い風船』と『白い馬』は、DVDではいっしょになっている。
『赤い風船』の男の子は監督の子パスカルで、『白い馬』では、アラン・エムリイの弟としてちょこっと出ている。パスカルは監督の息子だから素人丸出しだが、アラン少年は馬にも乗れ、演技もできるプロの子役だ。
『赤い風船』は、赤い風船と少年パスカルが主役で、ファンタスティックな映像が美しい。ストーリーらしきものはほとんどない。
アッジェのパリを思わせるような古い街並みを見るだけでも心洗われる。少年のあとを追う風船の赤が鮮やかだ。
赤い風船に人格があるかのように描かれ、悪童どもに赤い風船がつぶされると、街のあちこちからいろいろな色の風船がパスカルの所に飛来し、少年は街の上を天高く舞う。
さまざまな撮影の苦労が偲ばれるが、それと引き換えに得られた映像は圧巻だ。
『白い馬』は、南フランスの海沿いの荒れ地が舞台だ。野生の馬のリーダーである白いたてがみの白い馬と、少年フォルコ(アラン・エムリイ)の物語。
『赤い風船』同様、ほとんどセリフがなく、要所要所に音楽が入るだけで、こちらも映像一本で見せてくれる。
迫力ある馬の動きと少年のまなざしがテーマで、二つの心が通いあっていく物語だ。
少年の髪型はおそらく馬のたてがみが前に下りたようすに似せたのだろう。
『赤い風船』の少年は素人でかえってよかったと思うが、こちらのフォルコ少年は演技がしっかりしている。この映画のラストに向かうにふさわしい美貌で、特に目がよいし、目で芝居ができている。
湿地や乾いた土地など自然だけが背景で、車も電話も出てこず、ある意味、そのまま仮想宇宙の話のようだ。
それぞれ小品ながら、『赤い風船』はカラー作品で、ファンタジックな世界を、『白い馬』はモノクロ作品で、哲学的課題にまで踏み込むことに成功している。
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