映画 『大空港』

監督・脚本:ジョージ・シートン、製作:ロス・ハンター、原作:アーサー・ヘイリー、撮影:アーネスト・ラズロ、編集:スチュアート・ギルモア、音楽:アルフレッド・ニューマン、主演:バート・ランカスター、1970年、137分、配給:ユニバーサル、原題:Airport


雪の降りしきるシカゴのリンカーン国際空港が舞台。

夕刻着陸したトランスグローバル航空のボーイング707旅客機が、積雪のため誘導路から脱輪し、雪の中に車輪を沈ませてしまい、そのメイン滑走路が閉鎖に追い込まれる。あとから着く便は、すべてもう一方の滑走路を使うしかなくなっていた。

リンカーン空港長のメル・ベイカースフェルド(バート・ランカスター)は、妻シンディ(ダナ・ウィンター)と離婚寸前にあり、同じ空港内の地上勤務社員、ターニャ・リヴィングストン(ジーン・セバーグ)と恋仲になっていた。

一方、ローマ行きのトランスグローバル航空には、爆弾を積んだ男が乗ったことがわかり、リンカーン空港に引き返すことになる。・・・・・・


アーサー・ヘイリーの小説『大空港』を元に製作されたユニバーサル映画のエアポートシリーズは、以下の4作品。

『大空港』(本作品)

『エアポート'75』(1974年、原題:Airport 1975)

『エアポート'77/バミューダからの脱出』(1977年、原題:Airport '77)

『エアポート'80』(1979年、原題:The Concorde...Airport'79)


航空機パニック映画の始まりとされる映画で、後半は、搭乗した爆弾犯や、あとに残されたその妻の動向が中心となるものの、全編パニック映画というには、今からすると不充分で、ヒューマンドラマといったほうがいいかも知れない。そのヒューマンの部分にしても、主役の二人、メルとヴァーノン・デマレスト(ディーン・マーティン)は、それぞれ浮気している男である。ヴァーノンは、トランスグローバル航空のパイロットであり、客室乗務員のグエン・メイフェン(ジャクリーン・ビセット)と恋仲で、グエンは妊娠している。いずれにしても、ヒューマンドラマの色彩が濃いのは確かだ。

この二人を中心としたストーリー展開ではあるが、一種の群像劇であり、さまざまな人々が登場し、その人々の行動がひと筋のストーリーを編んでいくという展開で、いわゆるグランドホテル方式の映画だ。


年代を考慮すると、たしかに本作品は、当時人気の出てきたアメリカン・ニューシネマに対するハリウッド流のカウンターパンチとも言える。キャリアのある監督や撮影・音楽担当の起用、豪華な俳優の出演、カネをかけたセットなどからそう言われるが、それだけではない。

大きなストーリーの軸があり、それが二本の軸に分かれて描かれ、さらにそれぞれ色のグラデーションをもつかのように細分化されている。前半・後半の流れが分けられ、終盤の機内での爆発とハラハラさせながらの無事な着陸へとメリハリがつけられている。こうしたストーリーのもっていきかたこそ、伝統的なアメリカ映画の構成だ。


それだけに、男女の会話シーンや、無賃搭乗常習犯の老女、エイダ・クォンセット(ヘレン・ヘイズ)の描き方など、今からすると、ありふれた演出に終わっていてつまらなく感じてもしまう。


なお、アルフレッド・ニューマン(1901年~1970年)にとっては遺作となった。ニューマンは、チャップリンと共同で『街の灯』(1931年)の音楽を担当して以来、『嵐ケ丘』(1939年)、『血と砂』(1941年)、『わが谷は緑なりき』(1941年)、『イヴの総て』(1950年)、『ショウほど素敵な商売はない』(1954年)、『七年目の浮気』(1955年)などの音楽と担当した名作曲家である。


アルフレッド・ニューマンの推薦で、映画音楽もつくるようになったのが、こちらも名作曲家ジェリー・ゴールドスミス(1929年~204年)である。

映画を、作曲家を中心に観ていくのもおもしろいかも知れない。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。