監督:ガイ・リッチー、脚本:ガイ・リッチー、アイヴァン・アトキンソン、マーン・デイヴィス、原作:ニコラス・ブークリーフ『ブルー・レクイエム』、撮影:アラン・スチュワート、編集:ジェームズ・ハーバート、音楽:クリストファー・ベンステッド、主演:ジェイソン・ステイサム、2021年、119分、英米合作、配給:ユナイテッド・アーティスツ・リリーシング、ライオンズゲートUK、原題:Wrath of Man(=男の怒り)
ロサンゼルスの現金輸送専門の警備会社フォーティコ警備に、パトリック・ヒル(ジェイソン・ステイサム)という男が採用される。この会社は、実際には、現金そのものを回収し、一旦自社の倉庫に保管するという業務をしていた。ヒルは、ヒルの頭文字をとって「H」と呼ばれ、自分の乗る現金輸送車が襲撃されたときも、逆に襲撃犯6人全員を射殺してしまい、会社からは賞賛された。しかし彼は5ヵ月前、たまたまフォーティコの現金輸送車襲撃現場に息子ダギーと居合わせたため、ダギーが殺されるという過去を持っていた。その復讐のため、全く新たな人間になりすまし、その襲撃されたフォーティコに就職し、何とか犯人に近付こうとする。ヒルの正体は、FBIにも追及されるギャングのボス、メイソン・ハーグリーヴズであった。就職のための身分証や経歴書も、すべてこの仲間に用意させたものであった。・・・・・・
原題はもちろん、息子を殺されたハーグリーヴズの怒りのことである。全編ほとんど笑みを見せるシーンのないままストーリーは展開し、ラストで、直接息子を撃ち殺したジャン(スコット・イーストウッド)の居場所に行き、息子の撃たれたのと同じ内臓を順に撃って殺すことで終わる。
単純なアクションものではなく、節目ごとに「悪霊」「3か月後」「5ヵ月前」「5か月後」などといった小タイトルが付けられ、息子が襲われる襲撃現場のようすは、冒頭を含め、時系列の違った観点から三回映される。一本調子に進ませず、間に過去のシーンを挟み、また、肝心な息子殺しのシーンを重ねて描写したことで、ストーリーがわかりやすくなると同時に、息子を殺した犯人への執念も浮き彫りになってくる。
襲撃犯には元軍人もいるなど、プロ犯罪集団とも言えるが、これらの襲撃がうまくいっているのは、実は、会社内にスパイ役をしている者がいたからであった。その男こそ、就職したばかりのころからHと同じ車に乗ってきたブレット(ホルト・マッキャラニー)という男だった。襲撃犯グループは、最後の大博打に出る。大量の現金が倉庫に集められるブラックフライデー前日の晩、会社の倉庫そのものを襲撃するという計画だ。このプランも、ブレットがいたから計画できたことで、当日の現金回収の際、車内でブレットは、今日これから本社倉庫で起きることと自身のことをHに告げ、言われる通りに無抵抗にしていれば命は奪われない、などと了解を求めた。Hは犯人に辿りつけるチャンスとして、ポーカーフェイスでこれを了承したのである。
カメラのフットワークと編集がみごとだ。おそらく90分でも収まりうる内容を2時間弱のものにできたのは、細部まで練られた脚本の運びと、アクションものでは不可欠なキレのよいカットの連続であったろう。ラスト前の倉庫での銃撃戦は山場であるから当然として、それ以外のシーンでも、冒頭から切れ味のよいシークエンスが続く。
ドローンの性能が発達してからは、映画でも、クレーン撮影よりドローンを使うことが多くなった気がするが、本作品でも、かなり高所から真下を撮るのはドローンによるものではないかと思う。
カネがかかっているなと思って観ていた。製作費は4千万ドルとのことだが、興行収入は1億ドルを突破したのだからヒット作品と言える。
ジェイソン・ステイサムの静と動を区別した演技はよかったし、現金輸送車襲撃方法にもヴァリエーションがあり、銃撃戦も過不足ない描写と限度を心得た長さに抑え、全体に締まった作品となっている。
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