映画 『ディセント』

監督・脚本:ニール・マーシャル、製作:クリスチャン・コルソン、撮影:サム・マッカーディ、編集:ジョン・ハリス、音楽:デヴィッド・ジュリアン、主演:シャウナ・マクドナルド、2005年、99分、配給:エイベックス・エンタテインメント/トルネード・フィルム、原題:The Descent(=転落)


サラ(シャウナ・マクドナルド)は友人二人とボートに乗り、急流下りを楽しんでいた。帰る途中、トラックと正面衝突し、運転していた夫ポールは、トラックの鉄材が頭を貫通し即死、5歳になったばかりの一人娘ジェシカも助からなかった。

一年後、なかなか立ち直りきれずにいるサラを心配し、友人らが山のキャビンに集まり、洞窟探検をすることになる。女だけ六人の冒険であったが、サラはその誘いを受け入れた。具体的な冒険の計画を立てたのは、サラの一番仲の良いジュノ(ナタリー・メンドーサ)で、行き先はアパラチア山脈の公園内にある「ボアム洞窟」への探検であった。大きな穴からロープで洞窟の竪穴を下り、一行は洞窟の奥へと足を踏み入れていく。

あるところで、サラは洞窟の暗闇の奥に、サラは人の声のようなものを聞いたり、人に似た姿を見たが、皆に話しても信じてもらえなかった。・・・・・・


スタートしてまず ❛一発目❜ があり、そのあとタイトルが出るのは6分ころだ。この ❛一発目❜ はホラー映画の儀礼のようなものであり、早めの ❛一発目❜ があることで観る側を集中させ期待させもする。そのあとは各作品次第だ。

洞窟への車での移動となり、洞窟に入ってからが ❛本番❜ となる。この中盤以降、人に似た姿で全身濡れたような白い裸体の ❛ケダモノ❜ (=❛クローラー❜)が現われ、6人それぞれと格闘が始まる。いろいろなシチュエーションが用意されており、そこに、サラの夫が生前ジュノと逢引していたらしい話もうっすらと絡む。このエピソードは、冒頭の川下りの後、ジュノがポールを見る目や、運転中ポールがうわの空で事故になったことに結びつく。


 ❛ケダモノ❜ が勝っては話がそこで終わりになるので、女子と ❛ケダモノ❜ の格闘であっても女子が必ず勝つ。最後にひとり生き残ったサラは、血まみれの姿で、ようやく出口を見つけ地上に出られたと思いきや、それは幻に過ぎなかった。幻から覚めると、バースデイケーキの向こうに笑顔のジェシカがいる。再度そちらを見ると、バースデイケーキには6本の蝋燭が点されていた。

そのままカメラが引くと同時に、❛ケダモノ❜ どもの唸る声が聞こえ、いずれサラも犠牲になることを暗示して映画は終わる。


ホラーではあるが、映画として一応のストーリーがあり辻褄も合っている。❛ケダモノ❜ の登場シーンも、いきなり現れたりし、また水中の撮影もあり、バラエティに富ませる努力は認められる。❛ケダモノ❜ は洞窟暮らしが長く、視力を失ったぶん、聴力だけに頼って生きているという前提もよかった。ただ、洞窟内が舞台なので、サラたちが頭につけるヘッドランプや懐中電灯などの光であたりを映す設定であり、どうしても見えにくいシーンが多いのはやむを得ない。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。