映画 『五月の七日間』

監督:ジョン・フランケンハイマー、製作:エドワード・ルイス、原作:フレッチャー・ニーベル、チャールズ・W・ベイリー、脚本:ロッド・サーリング、撮影:エルスワース・フレデリックス、編集:フェリス・ウェブスター、音楽:ジェリー・ゴールドスミス、主演:バート・ランカスター、カーク・ダグラス、1964年、118分、配給:パラマウント映画、原題:Seven Days in May


脚本の名前を見て驚いた。脚本のロッド・サーリングは、テレビシリーズ『トワイライト・ゾーン』の脚本で知られるあのロッド・サーリングだ。『トワイライト・ゾーン』以外で彼の作品を観るのは初めてだ。


本作品は、全くの架空の話である。1970年5月、アメリカ合衆国とソビエト連邦との間で核軍縮条約を締結するかどうかで、世論は二分していた。現大統領ジョーダン・ライマン(フレデリック・マーチ)は、ソ連を信じ条約締結へと動いていたが、軍の総司令官ジェームズ・M・スコット将軍(バート・ランカスター)は、ソ連など信用できないとして条約締結に反対し、自らの演説を中継させるなどして、締結反対の世論の圧倒的支持を受けていた。

マーティン・ケイシー大佐(カーク・ダグラス)はスコットの直属の部下であったが、ある事実からスコットの「ある企み」を嗅ぎ取る。それは、次週日曜日午後、スコットは軍を挙げてクーデターを惹き起こすという計画であった。その日は公開演習の実施日であり、ライマン大統領も出席する予定であった。ケイシーは、その日ライマンが出席すれば、そのまま拉拘束されるおそれがあるとして、状況証拠をライマンに直言する。ライマン自身含め側近らは、ケイシーの話は俄かに信じなかったが、ライマンは万一の事態を想定し、ケイシーには、確たる証拠をつかむよう指示し、大統領首席補佐官ポール・ジラード(マーティン・バルサム)にも、あちこちに行かせ、詳細な事実を収集するよう命令した。ケイシーは、かつてスコットと親密な仲にあったエレノア・ホルブルック(エヴァ・ガードナー)にも会い、手がかりをつかもうとしていた。・・・・・・


他に、エドモンド・オブライエン、リチャード・アンダーソン、ジョン・ハウスマンらも登場するなど、出演陣は豪華な顔ぶれである。エヴァ・ガードナーがカーク・ダグラスと共演していたのは初めて知った。キスシーンまであることに驚いた。

監督は、『終身犯』(1962年)や『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身』(1966年)などで知られるジョン・フランケンハイマー。


冒頭に、ホワイトハウスの前で、両者を支持するデモ隊が乱闘となるシーンが置かれ、その後はほとんどが、大統領執務室や軍の本部などセットでの撮影となっている。

いわゆる硬派な内容で、全編にシリアスな雰囲気が張り詰めるが、といって妙に深刻にならず暗く落ち込むような流れにもならず、いかにも当時のアメリカ映画の「健全さ」や「明朗さ」で貫かれている。エヴァ・ガードナーも二つのシーンで登場するが、軍人相手に恋をし失恋した女性を上手に演じている。女性を登場させ、恋やプライベートをストーリーの上に垣間見せていくといった手段はとられていない。


ベテラン俳優陣のやりとりと、コトが動いていくテンポも一定で、誠実につくられた映画である。カメラワークに特異なところはなく、撮り方のくふうが見られる程度だ。俳優の演技合戦をみられる作品であり、戦後アメリカ映画の水準の高さを感じさせる映画だ。

冒頭のタイトルシークエンスにも注目しておきたい。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。