映画 『縛り首の木』

監督:デルマー・デイヴィス、脚本:ウェンデル・メイズ、ハルステッド・ウェルズ、原作:ドロシー・M・ジョンソン、撮影:テッド・マッコード、編集:オーウェン・マークス、音楽:マックス・スタイナー、主演:ゲイリー・クーパー、マリア・シェル、1959年、106分、カラー、配給:ワーナー・ブラザース、原題:The Hanging Tree


1873年、モンタナ州、ゴールドラッシュに湧く川沿いの集落が舞台。

医師であり銃の達人でもあるジョー・フレイル(ゲイリー・クーパー)が、この集落に着き、自分の家を手に入れる。川の中から金を盗もうとして撃たれたルーン(ベン・ピアッツァ)を助け、手当をしたかわりに、自分の元で助手として働かせる。

ある日、父親と馬車でこの集落の上を通りかかったエリザベス・マーラー(マリア・シェル)は、馬車ごと襲撃され、ひとり岩場に倒れ込む。皆で探すうち、山師でもあるフレンチ(カール・マルデン)に見つけられ、フレイルが治療する。強い太陽の下、仰向けに倒れていたため、顔の皮膚が傷つき、視力もない状態にまで陥っていた。・・・・・・


久しぶりに西部劇を見た。そして気が付くことは、当然のことながら、ロケが多いということだ。セット撮影は小屋の中や俳優のアップシーンに限られ、その他は雄大な山々や川、森の中などがメインで、セット多用による一種の息苦しさがない。セットでのアップシーンもここぞというときに限って用いられ、うまく前後を編集でつないでいる。


「縛り首の木」の意味については、主題歌 "The Hanging Tree" として、マーティ・ロビンスにより、冒頭より歌われている。その木に、もう少しでジョーは吊るされそうのなるが、ぎりぎりのところで救われるのである。

時折挿入される音楽は、『汚れた顔の天使』(1938年)、『風と共に去りぬ』(1939年)、『カサブランカ』(1942年)まどで知られる映画音楽の大御所マックス・スタイナーによるものだ。


ごうふつうの西部劇エンタメ映画として、安心して観ていられる。

ある男(アウトサイダー)が、ある集団の中にやってきて、それなりにそこでひと役買うのだが、やがて新参者としてひと悶着起こすことになる。だが、それまでに味方となる者が出来ていて、旧習に打破して、その集団を去って行く。・・・本作品では、去って行くところまでは描かれず The End となるが、西部劇特有のこうした図式は、本作にも当てはまる。その意味で、安心して観ていられるのである。


ルーン役のベン・ピアッツァは、テレビ界出身のようだが、いい役をもらったと思う。マリア・シェルは、『居酒屋』(1956年)、『白夜』(1957年)、『カラマゾフの兄弟』(1958年)など文芸作品の映画化作品で知られる演技派女優である。

ジョージ・C・スコットのスクリーンデビュー作でもある。『欲望という名の電車』(1951年)、『波止場』(1954年)で名脇役を演じたカール・マルデンが、野卑な男を演じている。ゲイリー・クーパーにとっては晩年の作品である。



日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。