監督・脚本:デヴィッド・エアー、撮影:ローマン・ヴァシャノフ、編集:ドディ・ドーン、音楽:スティーヴン・プライス、主演: ブラッド・ピット、2014年、134分、原題:Fury
1945年4月、連合国がナチス・ドイツに最後の攻勢をかけようとしていた。第2機甲師団・第66機甲連隊に所属するドン・❛ウォーダディー❜・コリアー(ブラッド・ピット)は、M4A3E8 シャーマン「フューリー」号の車長を務めていた。そこには、砲手のボイド・❛バイブル❜・スワン(シャイア・ラブーフ)、装填手のグレイディ・❛クーンアス❜・トラヴィス(ジョン・バーンサル)、操縦手のトリニ・❛ゴルド❜・ガルシア(マイケル・ペーニャ)が乗っていた。副操縦手は戦闘で死亡したため、新兵で、軍ではタイピストしか務めたことがないノーマン・❛マシン❜・エリソン(ローガン・ラーマン)が、補充要員として配属される。ノーマンは戦車の中を見たこともなく、まして戦闘に参加したこともなかった。・・・・・・
ドイツ製のティーガーⅠとアメリカ製のシャーマンの「向き合わせ」を軸に、ドンとノーマンの関係、ノーマンの変貌ぶりを描いた作品だ。
ストーリー展開は、ドンとノーマンの関係を軸に、他の「フューリー」号乗員との会話ややりとりで進んでいく。副次的な軸はなく単線の展開であるが、ドンらの任務遂行はドイツ軍の足止めであり、それに向けて「フューリー」も<単線>を進んでいくので、単線同士で一致し、退屈はしない。却って回想シーンなど入れす、よかったと思う。また、これは、気の利いたセリフや、細やかに変化するカメラワークにも依っている。
戦争を題材とした映画には、さまざまな撮り方があるが、本作品では実戦シーンが多い。そのため、シーンの半分近くは「フューリー」号内部のシーンだ。戦闘シーンでは、敵の攻撃に対するシャーマン内部のシーンの短いカットが、緊迫感をもつよう、うまく編集されている。敵は外見からだけ撮っているが、こちらサイドは、シャーマン内部とその攻撃を交互に映していく。
ノーマンは初め、戦闘要員としては箸にも棒にも掛からぬ存在であったが、激戦練磨の先輩らにからかわれながらも短時日で成長し、特に、ドンの配慮で、占領し立ち入った家の娘と関係をもち、その後のドイツ軍の空爆によりその娘が殺されたのを目の当たりにして、一挙にドイツ軍への憎しみを膨らませるのである。アメリカに占拠された地域に残っていれば、自国民でもこうして平然と空爆で殺してしまうドイツ軍に、ノーマンは怒り心頭になったのである。
主役であるブラッド・ピットは、表情を含めいい演技をしており、その他の乗員も準主役級であり、それなりにしっかりした演技力で、観ていて不安感はない。しかしやはり、ノーマンを演じたローガン・ラーマンの熱演は見応えがある。『バタフライ・エフェクト』(2004年)のエヴァン役の少年は、演技のできる若手俳優に変身していた。
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