監督:三木孝浩、原案:映画「ただ君だけ」、脚本:登米裕一、撮影:小宮山充、照明:加藤あやこ、録音:石寺健一、美術:花谷秀文、編集:柳沢竜也、音楽:mio-sotido、主演:吉高由里子、横浜流星、2020年10月、123分、配給:ギャガ
タイトルの「瞳」は、「め」と読むようだ。
篠崎塁(横浜流星)は、かつてキックボクサーとして将来を有望視されていたが、ある一件を契機に心を閉ざし、そうした過去を引きずったまま、今は酒屋の配達のアルバイトをしていたが、さらに駐車場の管理のアルバイトも始める。ある晩そこに、見知らぬ女性が、おいなりやゆで卵を持ってきて、きょうはこれをどうぞ、と言って塁に手渡した。その子は目が見えないようだ。その女性、柏木明香里(あかり、吉高由里子)は、毎週テレビを「見させてもらう」ために、駐車場入口の管理人のへやを訪れていたのだ。明香里は、手渡した相手が、今までの年配の管理人と思っていた。明香里はその後も定期的にやって来ては明るい調子で話しかけてくるので、塁も次第に心を開いていくのだった。・・・・・・
よくあるパターンの胸キュン映画と思って見始めたが、まあまあそれなりによかった。
ストーリー展開は恋愛ものに長けているようで、帳尻はきちんと合わせている。二人が出会ってから親密になり、それぞれが新たな一歩を踏み出すところまででちょうど60分、その後、明香里の網膜剥離の手術の費用を得るため、累がやむを得ず昔の仲間と関わり、不法賭博のボクシングの試合に出、それまでの明香里の<見えない世界>と塁の<見える世界>が逆転していく。ラストはバッドエンドにしてもいいのだが、二人を思い出の海岸で出会わせ、ハッピーエンドにしている。
カメラワークもよかった。横着をせず、気持ちの微妙な変化に応じて、カットを分けている。特に、編集がよい。ボクシングのシーンはじめ、ツーショットのシーンなども、基礎に則り効果的につないでいる。
この手の映画では、小物がモノを言うが、シーグラス、粘土、オルゴール、そしてスクと名付けられた飼い犬、また、島崎藤村の「椰子の実」の歌やBGMも効果的に活きている。
演技に関しては、吉高由里子はそれなりにがんばっているが、横浜流星が小声で話すときの台詞が聞きづらい。シスター役の風吹ジュンは、他作品同様、いい味を出している。他では、ボクシングジムのコーチ役のやべきょうすけの演技がうまかった。声もよく出ていた。
あえて難を言えば、いくら架空の出来事とはいえ、ストーリー全体が、胸キュンありき、で書かれているところだろう。全体に実に作為的であり、それだけに計算も合い、帳尻も合うのだが、その<出来過ぎ感>が鼻についてしまうのだ。
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