監督・脚本:黒沢清、撮影:林淳一郎、編集:菊池純一、音楽:羽毛田丈史、主演:加藤晴彦、麻生久美子、2001年、118分、 配給:東宝
黒沢清のつくりは好きな方だが、これは見ていなかったので、見てみた。この頃は次々に作品を発表しているころで、やり残したものをここにまとめたといった感があって、時間や製作費はかかっていても、それを除けば、高校文化祭レベルの映画だ。製作会社に、テレビ局や広告代理店(日本テレビ放送網、博報堂)が入った映画は、だいたいがエンタメ性もなく、つまらないものに終わる。
冒頭の船のシーンからオープニングのあと本編が始まり、ラストで船のシーンに戻る。本編は回想として流れていく。
だらだらと暗い画面と、ぼそぼそとしか聞こえない役者の台詞を聞かされながら、ようやくストーリー上のポイントらしきものが出てくるのは、映画が半分過ぎたあたりでの大学院生・吉崎(武田真治)の川島亮介(加藤晴彦)に対する説明のくだりだ。
幽霊が行く場所を失うと現実の世界に溢れ出てくる、ということだが、パソコンの中に現れる顔や周囲の人々の突然の失踪=死亡との因果関係が、明確に伝わってこない。黒い影や飛び降り自殺などのシーンはあっても、ストーリーの本質にかかわってこないので、映像上の効果をもたないのである。
その後、『アカルイミライ』(2003年)、『叫』(2007年)、『トウキョウソナタ』(2008年)などを産み出していく前のエチュード作品と位置付けるしかない。
監督が脚本を一人で兼務する映画は、うまくいくか、独りよがりの駄作に終わるか、のどちらかだ、というのは私の考えだが、本作品はまさしく後者のほうである。
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