監督:シドニー・ルメット、脚本:ジェイ・プレッソン・アレン、シドニー・ルメット、原作:ロバート・デイリー、撮影:アンジェイ・バートコウィアク、編集:ジョン・J・フィッツスティーヴンス、音楽:ポール・チハラ、主演:トリート・ウィリアムズ、ジェリー・オーバック、1981年、167分、アメリカ映画、配給 ワーナー・ブラザース、原題:Prince of the City
ダニー・チエロ(トリート・ウィリアムズ)は、ニューヨーク市警麻薬課の捜査官であり、6人のチームの一員であった。検察から、麻薬課内部に汚職刑事がいると知らされ、ダニーは協力を求められる。ダニーの腕前は、プリンス・オブ・シティと言われるほどの功績があり、検察当局にも知られた名だったからだ。
ダニーは当初断るが、検察の申し出を受け入れ、薬の売人と交流し、潜入捜査を始める。・・・・・・
ストーリーが展開するにつれ、ダニー自身も、麻薬捜査後に金銭を着服していた事実があることがわかってくる。このことは、彼のチーム全体で行われていたことだった。検察の手先になることで、同時に、自身と自分の仲間を裏切るような板挟みに耐え切れず、映画中盤で、自ら汚職にかかわっていたことを新聞に発表する。
中盤からは、検察の動きが中心となり、かつて裁判で、彼の証言により有罪となった売人らの証言を見直すのをはじめ、それらが正当な裁判であったのか、ダニーが実は偽証していたのではなかったか、などの疑問が出され、ダニー自身も、良心の呵責に葛藤する。すべて正直に話すことにしたダニーは、検察の言われるまま、元の同僚に自首を勧めるが、そのうち一人は拳銃自殺するなど、重大決心をしたダニーにとっては辛い展開が続く。
いかにも、『十二人の怒れる男』(1957年)でデビューしたシドニー・ルメットらしいシリアスな展開で、登場人物も多いが、話が進むに連れ、身辺の状況や心境の変化を確実に演じたトリート・ウィリアムズの演技はすばらしい。ちなみに、彼の妻カーラを演じたのは、『評決』(1982年)で、重大な証言をする元看護婦ケイトリン・コステロを演じたリンゼイ・クローズである。
展開が早く、場所があちこちに動くので、『十二人…』のようなカメラアングルの楽しみはそれほどないが、遠くに人物を映すとき、フレーム内に、地面や歩道をかなり入れて撮るなど、ルメットらしい演出は、あちこちに見ることができる。
ラスト近く、いよいよ検察がダニーを起訴するかどうかの土壇場となり、ダニーは起訴されずに映画は終わる。
尺は長いが、牽引力を保ったまま最後まで突っ走る映画だ。
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