映画 『陸軍中野学校 密命』

監督:井上昭、脚本:舟橋和郎、監修:日下部一郎、撮影:今井ひろし、編集:山田弘、照明:加藤博也、美術:西岡善信、音楽:斉藤一郎、主演:市川雷蔵、山形勲、高田美和、1967年6月、88分、製作・配給:大映


昭和15年初夏、上海にいた椎名次郎(市川雷蔵)は、憲兵に捕まり、東京の憲兵隊本部に拘置される。機密事項を重慶のシナ側スパイに売り渡したという容疑だった。牢屋には、高倉秀英(山形勲)がいた。高倉は前外務大臣であった。椎名は不起訴となり、出所するが、迎えにきた若い男に付いていくと、そこには草薙大佐(加東大介)がいて、男は中野学校の卒業生であった。こうした手荒なマネをして椎名を日本に呼び寄せた理由を、草薙が詫びつつ椎名に語った。今回の密命は、通称キャッツアイと呼ばれるスパイの大物がいて、日本側の情報をイギリスに知らせているらしい、ついては、そのスパイを特定し捕まえること、であった。椎名は草薙の指示のもと、拘置所で面識のあったことを理由に、箱根にある高倉宅を訪問することから始める。高倉には、一人娘・美鈴(高田美和)がいた。・・・・・・


中野学校のスパイが、かなり危険な任務を背負っていることを見せてくれる内容になっている。高倉の周辺に、草薙が教えてくれた怪しい人物は多数いるが、次第に焦点が絞られていくスリリングな展開もよかった。

本作品では、冒頭近く、椎名が憲兵に拷問を受けるシーンや、ラスト近く、キャッツアイである駐日ドイツ大使の幹部を追いつめるまでなど、アクションシーンも多く撮られている。頭脳戦だけでなく、スパイがからだを張った仕事だということを存分に見せてくれる。


高田美和、野際陽子の若い頃の姿を見られるのもうれしい。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。