映画 『マルタの鷹』

監督・脚本:ジョン・ヒューストン、原作:ダシール・ハメット、撮影:アーサー・エディソン、編集:トーマス・リチャーズ、音楽:アドルフ・ドイチュ、主演:ハンフリー・ボガート、メアリー・アスター、1941年、101分、配給:ワーナー・ブラザース、原題:The Maltese Falcon


1931年、1936年に続く三度目の映画化。


サンフランシスコにある探偵事務所に、ある女性(メアリー・アスター)が、行方不明の妹を探してほしいと依頼に訪れる。探偵サム・スペード(ハンフリー・ボガート)が話を聞くと、女性の妹は、その夜、サースビーという男とある場所に現れるので、いっしょに来てほしい、という。ちょうど事務所に帰ってきた相棒の探偵マイルズ・アーチャー(ジェローム・コーワン)が、その女性に同伴することになる。

しかし、その夜、待ち合わせ場所で、マイルズは射殺されてしまった。サムは必死に情報を集めるうち、「マルタの鷹」という幻の彫刻を巡って、悪党どもが暗躍している事実を知る。


ジョン・ヒューストンの監督デビュー作品であり、脚本も兼ねている。戦後アメリカのハードボイルド映画や、フィルム・ノワールの古典と位置付けられている。全二作が不評だったため、三度目の映画化は疑問視されたが、ジョン・ヒューストンの熱意に負けて作られたという。

ハンフリー・ボガート、ピーター・ローレ、シドニー・グリーンストリートは、翌年の『カサブランカ』(1942年)でも共演している。


そうした有名作品ということもあり、今まで何度か見ているが、これもやはり会話中心の映画となっている。肝心なシーンは、ほとんどが室内劇で、あたかも舞台劇をそのまま撮影したような感じだ。それでも大幅な失敗を免れたのは、宝物を追い求めるというストーリー自体が、観る側を引っ張っていく牽引役を果たしているからだろう。


嘘つきだらけの曲者と警察たちのなかに混じり、サムが孤軍奮闘するようすが中心になるが、その他周囲の人間を演じる俳優たちの演技力も高く、観ていて安心はしていられる。

冒頭近く、サムがタバコに火を点けるが、そのライターをはじめ、拳銃や酒やグラスなど、ハードボイルドになくてはならぬ小道具もよく映り、フレームの中はゴージャスである。


こうした映画が絶賛された時代が確実にあったのだなあ、と認識を新たにする映画だ。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。