映画 『女の警察』

監督:江崎実生(えざき・みお)、脚本:中西隆三、企画:増田彌寿郎、原作:梶山季之、撮影:横山実、編集:鈴木晄、音楽:佐藤允彦(さとう・まさひこ)、主題歌 「酒場人形」(青江三奈)、主演:小林旭、十朱幸代、1969年(昭和44年)2月、82分、配給:日活。


「小林旭デビュー65周年記念」日活DVDシリーズ全22作品のうちの一つで、2021年6月2日にリリースされた。青江三奈にとっては、「長崎ブルース」大ヒット中の出演映画である。この映画で使われる「酒場人形」という唄が、『女の警察』という映画の主題歌であることは、当時から知っていたが、この映画はレンタルショップにもなく、数十年の月日を経て、ようやく出会えたということになる。これら青江三奈の歌が次々にヒットしたころ、また、この映画の封切られたころ、都内の著名大学は大学紛争の真っ最中であり、封切ひと月前の1月には東大安田講堂占拠事件が起きている。


銀座のキャバレーやバーで、ホステスの管理などをおこなっている篝正秋(かがり・まさあき、小林旭)に、かつて篝の元で働き、今は篝の友人の妻となった玖島千代子(くしま・ちよこ、十朱幸代)から、主人が亡くなった、との連絡を受ける。

玖島の葬儀で篝は、千代子から、主人は殺されたのだと思う、と聞く。玖島は雑誌社の記者で、関西における新幹線の土地買収に絡む汚職を突き止めたようであり、知り過ぎた男として消されたのか、と篝は直感する。

篝は、同じく玖島の友人であった記者の加藤(小高雄二)とともに、真相を暴いていくことになる。篝の店の元ホステスで、借金を残したまま消えた丹羽章子(牧紀子)の行方を追う。玖島が追っていた男二人が篝の店に来ると、章子が必ず席に付いていた。・・・・・・


当時人気のあった梶山季之の原作に、ハスキーボイスとして人気絶頂であった青江三奈と、日活のスターであった小林旭を並べ、高度経済成長のもとで、生まれるべくして生まれたような作品だ。梶山本人と作家の山口瞳、主題歌『酒場人形』を作詞した山口洋子が、カメオ出演するシーンもある。

シリーズとなる作品の一つではあるが、加藤嘉、十朱久雄、加原武門、内田朝雄、神田隆、郷鍈治、内田稔といったベテラン陣ややくざ映画の常連メンバー、女優では、上記のほか、梶芽衣子に改名する前の太田雅子、槙杏子が、体当たりの演技を見せている。青江三奈にも、背中の入れ墨を見せ、篝に、苦しい胸の内を明かすシーンなどがある。


ストーリーとしては、ホステスのかかわる政治的汚職騒動が背後にあるなかで、男たちに翻弄される女たちの生きざまや、数人のホステスそれぞれにテーマを絞って描いている。それでも映像は、美しい女たちと、篝という「女の警察」の活躍ぶりを中心に、夜の蝶の生きざまを中央に据えた、「情」を盛り込んだ娯楽作品である。


葬儀や空港、マンション外観のシーンなどロケが入るが、それ以外はほとんどスタジオでの撮影である。そうであるからには、特にこうした映画の場合、照明・録音が重要になってくるのは言うまでもない。また、内容柄、カメラワークに特異なものはないが、邦画の伝統や基本をしっかり押さえた撮り方がされていて、観ていて安心でできる。監督の江崎実生は当時37歳であるが、日活という厳しい世界で、若くして監督を任せられたことになる。



日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。