映画 『チャイナタウン』

監督:ロマン・ポランスキー、脚本:ロバート・タウン、製作:ロバート・エヴァンス、撮影:ジョン・A・アロンゾ、編集:サム・オスティーン、音楽:ジェリー・ゴールドスミス、主演:ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン、1974年、131分、原題:Chinatown


ジョン・ヒューストンは、『マルタの鷹』(1941年)、『アスファルト・ジャングル』(1950年)、『荒馬と女』(1961年)などで知られる映画監督である。


1930年代後半のカリフォルニア州ロサンゼルスが舞台。

私立探偵ジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)のところに、「モウレー夫人」と名乗る女性が来て、夫の浮気を調査してほしいと言う。その夫とは、市水道局施設部長ホリス・モウレーのことであった。 

尾行するうち、ジェイクは、ホリスが若いブロンドの女性と、公園の池でボートの乗っているところなどを写真に収める。だが、ジェイクの撮ったその写真が、翌日の新聞に載せられ、ホリスのスキャンダルとなってしまう。そして数日後、ホリスは、放水路で溺死しているのを発見される。

ジャエクはこの一件に関心をもち、独自に調査しようとするが、そこに本物のモウレー夫人のエヴリン・(フェイ・ダナウェイ)が現われ、改めて、夫の死の真相を究明してほしい、と依頼する。

一方、ホリスの事務所を訪れたジェイクは、壁に飾ってある写真などから、地元の有力者ノア・クロス(ジョン・ヒューストン)に会いに行く。・・・・・・


この時代、カリフォルニア州ロサンゼルス地区は、水路が足りず、住民は水の供給を求めていたなど、ロサンゼルス上水路に関する水利権争いによる水不足が深刻化しており、この映画は、こうした歴史的事実を軸に置き、そこに親子や男女の愛憎を絡ませて描かれている。

脚本は、一定のテンポでゆっくりと進み、そこに、ジェリー・ゴールドスミスの音楽がけだるく流れ、演出効果を増している。ジェリー・ゴールドスミスが音楽を引き受けたのは、予定公開日のわずか二週間前であった。


あちこちにばら撒かれた物的・人的な材料や伏線は、ラストに向けて少しずつ意味をもち、やがて一本の縄を綯(な)うように収斂していく。冒頭に出てきた人物が最後の救出劇にひと役買うなど、用意周到な展開を見せる。

脚本のロバート・タウンは、アカデミー脚本賞を受賞している。


カメラワーク自体に特別なものはないが、ジェイクや、画面に映る人物の、立ち位置や動きなどがきめ細かく決められているため、撮り方で特に工夫するような必要がなかったのであろう。


大きな利権や、チャイナタウンに棲息するフィクサーまがいの男とその娘一家の悲劇を描いたフィルム・ノワールで、エキセントリックな作品を発表しつづけたポランスキー、41歳のときの名作である。ポランスキーは、ジェイクの鼻を切るチンピラの役で、カメオ出演している。


ソロのトランペットをフィーチャーしたけだるいメインテーマとともに、水の来ない乾いた土地柄を舞台として、この時代のこの地域の人間関係や雰囲気をも楽しめる作品となっている。



日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。