アニメ映画 『バケモノの子』

企画・制作:スタジオ地図、原作・監督・脚本:細田守、キャラクターデザイン:細田守、山下高明、伊賀大介、作画監督: 山下高明、西田達三、美術監督、大森祟、高松洋平、西川洋一、音楽:高木正勝、主題歌:Mr.Children「Starting Over」、119分、カラー、2015年7月11日公開。

声の出演:宮崎あおい(九太(きゅうた、幼少期)、染谷将太(九太、青年期)、役所広司(熊徹(くまてつ))、広瀬すず(楓(かえで))


身寄りのいなくなった9歳の少年は、親類の言うことに逆らい、渋谷の雑踏をさまよう。

警官に追われ路地に入ると、そこはバケモノの世界に通じていた。

一方、バケモノの世界では、次期宗師を決めるための決戦が近づいていた。

その侯補の一人である熊徹には子供がなかったため、熊徹はその少年を弟子にし、共に強くなろうとする。少年は9歳だったため、熊徹は彼を九太と名付けた。九太も強くなるため、熊徹の戦いぶりをまねていく。・・・・・・


背景は細かく丁寧に書き込まれ、アニメもきれいだ。キャラクターもそれぞれに際立ってはいる。

ただ、ストーリーとして、話の大筋はわかるが、内容を詰め込み過ぎて、広がり→回収、疑問→回答、という流れがなく、総花的な印象だ。

これは、際立ったキャラクター同士が、例えば、熊徹と九太が、相手と向き合う際にもつ感情を描き切っていないからだ。


9歳の九太が、熊徹のいる世界で、人間として成長していく過程は順を追って丁寧に描かれているものの、17歳になって以降の後半になると、バケモノの世界と人間の世界との狭間で揺れる少年の心はどこかに行ってしまい、少年の心の葛藤などは見えてこない。

熊徹が身を賭して、少年を守ることになるラストは、この作品の圧巻であり、そのあたりの処理や運びはよかった。

それだけに、後半の拙速な展開が惜しまれる。


途中より、人間の闇というのがテーマとして唐突に登場してくるが、これについても、もう少し踏み込んだセリフがどこかに欲しかった。

それでも、親子で気軽に楽しむにふさわしいアニメであろう。

日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。