監督:小林恒夫、原作:松本清張、脚本:井手雅人、撮影:藤井静、編集:祖田富美夫、美術:田辺達、照明:川崎保之丞、音楽:木下忠司、主演:南廣、山形勲、高峰三枝子、1958年(昭和33年)、85分、カラー、東映。
福岡県・博多郊外の香椎(かしい)海岸で、一組の男女の心中遺体が発見された。男は産工省の課長補佐・佐山、女は料理屋の女中・お時だった。
しかし、所轄署の刑事・鳥飼(加藤嘉)は二人の死に疑問を抱く。心中するのに、こうした寂しい場所を選ぶものだろうか、履物や衣服があまりにもきれいに整いすぎている、・・・。食堂車利用の利用券も一枚だけであった。
ところが、遺体検分のため来ていたお時の同僚・八重子からは、思いがけぬ証言を得る。たまたま東京駅で、二人が寝台特急「あさかぜ」に乗るのまで見ていたという。
事件からひと月近く経ったある日、警視庁の刑事・三原(南廣)が鳥飼のもとを訪れる。二人は話すうちに、この件は、心中に見せかけた殺人ではないのかという推理に至る。
八重子によれば、正確には、料理屋をよく利用していた鉄鋼会社の社長・安田(山形勲)に伴われて横須賀線・東京駅ホームに上がったとき、偶然、二人を目撃したという。
安田は、産工省の佐山の上司とも納品の関係で親密であり、三原は、汚職事件の発覚を防ぐため、安田が大芝居を打ったものと推理し、安田の周辺を洗い、アリバイを捜査しはじめる。・・・・・・
三原らが調べると、横須賀線の入る13番ホームから、「あさかぜ」の停車している15番ホームを見通せるのは、一日のうちたった4分間であることがわかる。
安田がなぜ、その4分間に固執してまで、第三の目撃者をつくる必要があったのか。
しかも、事件の前後には、安田は商談のため、札幌に行っており、その証拠もあり、鉄壁のアリバイがあった。
だが三原は、その完璧すぎるアリバイにこそ、疑いの目を向ける。
当然、白黒での製作がふつうのころに、あえてカラーで仕上げている。
しかし、これは無理をしてでもカラーにしなければならなかった。なぜかは、映像を見れば納得するだろう。
短い時間に圧縮しようとしたためか、推理がどしどし出され、その方向に一直線に向かっていくので、おもしろおかしい要素はない。それだけにムダもなく、ぐいぐい引っ張る力があり、ちょっとした演出やカットの挿入で、ストーリーの展開にアクセントを置こうとしている。
事件のカギを握るのは、安田の病妻(高峰三枝子)であり、偽装心中のストーリーにおいても、流れる映像においても、事実上の主人公である。
飛行機が一般庶民にはまだ高値の花であった時代、新幹線もなく、列島の移動は特急列車が主であった。本作はそうした時代の産物とも言えるが、また、当時の列車のなか、青函連絡船、自動車、東京駅などを見られる楽しみもある。
演技達者の集合した作品であり、安心して観ることができる。
つくりとしても、原作タイトルの「点と線」の意味合いを常に意識しているようであり、妙にホームドラマ的なほのぼの感やお涙頂戴を消したのは、かえって評価できる点だ。
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