映画 『新 仁義なき戦い 組長の首』

監督:深作欣二、脚本:佐治乾、田中陽造、高田宏治、撮影:中島徹、編集:堀池幸三、音楽:津島利章、主演:菅原文太、1975年、98分、配給:東映。


「仁義なき戦いシリーズ 」(1973年~1980年)の後を継ぐ、「新 仁義なき戦いシリーズ」の第二弾。「仁義なき戦いシリーズ」が、実録を基本とし、内容のうえで一定の関連性をもっていたのに対し、「新 仁義なき戦いシリーズ」の三作品は、それぞれが独立し、全くの架空の物語として描かれている。したがって、本作品も、前作の『新仁義なき戦い』(1974年)と内容上の関連性はない。


今観てみても、任侠映画とはいえ、映画のつくりとして秀逸であり、何度も観たくなる仕上がりになっている。

本作は、北九州が舞台となっているため、呉を舞台とした前作までように広島弁ではなく、九州の方言やヤクザ的言い回しが中心であり、耳にしていてなかなか心地よい。脚本は充分に練られ、ぐいぐいと引っ張っていく牽引力がある。そのストーリー展開のなかに、主演の黒田修次(菅原文太)の生きざまが、明瞭に現れている。

カメラも縦横無尽に動き、相当な長さを回し、編集でうまくカットしつないでいる。拳銃の撃ち合いなどアクションシーンの撮り方・編集も念が入っており、特にラスト近くに出てくる車同志のアクションは、アメリカ映画に勝るとも劣らない出来となっている。


また、重厚な俳優陣を観ていても懐かしい。「仁義なき戦いシリーズ」常連の俳優を中心に、多くの役者を観られるのもうれしい。 西村晃、成田三樹夫、織本順吉、睦五郎、汐路章、渡瀬恒彦、八名信夫、野口貴史、岩尾正隆、内田朝雄、川谷拓三、成瀬正、特に、室田日出男、 山崎努、小林稔侍は、よい役どころを得、演技が光る。山崎務は、菅原文太との共演は最初で最後である。室田日出男、 山崎努は、前半で絶命し、小林稔侍もラスト直前で死ぬ役だ。

女優では、監督の妻である中原早苗が体当たりの汚れ役をこなし、ひし美ゆり子が、豊満な肢体を晒すほか、和洋の美しさを披露している。梶芽衣子は若く新鮮な美しさで、組長の娘役に、うまく成り切っている。


ヤクザ映画だからと、一般には低く評価されがちだが、ポルノ映画同様、映画としてのエンタメ性という意味では、多くの映画製作者が観ておかねばならない作品であろう。そしてこれは、「仁義なき戦いシリーズ」全体にも言えることである。

エンタメ性の神髄を牽引する邦画の力強さを知るには、絶好の作品だ。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。