映画 『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』

監督:中田秀夫、脚本:大石哲也、原作:志駕晃:「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」(宝島社文庫)、撮影:今井孝博、編集:青野直子、照明:木村匡博、美術:塚本周作、装飾:柳澤武、録音:秋元大輔、音響効果:大河原将、主演:千葉雄大、白石麻衣、成田凌、2020年、118分、配給:東宝


長い黒髪の女性を標的とした連続殺人事件を起こした浦野(成田凌)が、神奈川県警の刑事・加賀谷(千葉雄大)によって逮捕される。その数か月後、とある山奥で女性の白骨遺体が発見される。その現場が、かつて浦野が殺害した女性を埋めた場所の近くであることから、加賀谷の上司、牧田(田中哲司)は、浦野から情報を聞き出すよう加賀谷に命じる。

獄中で加賀谷と面会した浦野は、自分がネットワーク犯罪の師と仰ぐブラックハッカーの「M」が事件に関与していることを話す。Mが誰か、を突き止めるため、牧田は「超法規的措置」として浦野を捜査に協力させるよう、加賀谷に命じる。

一方、加賀谷には、松田美乃里(白石麻衣)という恋人がいたが、いろいろな過去を引きずり、結婚に踏み切れず、美乃里からは距離を置かれることになってしまっていた。・・・・・・


バカにして観始めたが、わりとおもしろかった。

主役はたしかに加賀谷と実乃里なのだが、ストーリー上の主人公は浦野である。

加賀谷個人の活躍や過去と、刑事としての加賀谷の活躍を、うまくリンクさせながら、ストーリーは展開していく。ラスト近く、Mの正体や、事件の真相が明らかになるあたりでは、いわばどんでん返しの手法が用いられているが、これを姑息ととるか、文字どおりどんでん返しととるかにより、脚本上の評価は分かれるだろう。


スマホとパソコンを駆使した展開は興味深いし、現代風なつくりである。この点で、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)を想起させる。また、事件の真相を知るため、凶悪犯を協力を仰ぐため留置所の外に出すという点では、『羊たちの沈黙』(1991年)を思い出させる。


加賀谷が、心理的に圧迫を感じるシーンで、故意に映像をいじっているが、別にああしなくてもよいのではないか。


浦野役の成田凌は身長と顔の造作を活かし、正気と狂気の境を行き来するサイコぶりを、うまく演じている。

加賀谷役の千葉雄大はがんばっているが、美乃里役の白石麻衣は演技未熟である。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。