映画 『恐怖の報酬』(1977年)

監督・製作:ウィリアム・フリードキン、脚本:ウォロン・グリーン、撮影:ジョン・M・スティーブンス、編集:バッド・スミス、ロバート・K・ランバート、音楽:タンジェリン・ドリーム、キース・ジャレット、チャーリー・パーカー、主演:ロイ・シャイダー、ブリュノ・クレメール、1977年、121分、カラー、アメリカ映画、原題:Sorcerer(魔術師)


本作品DVDタイトルには、「オリジナル完全版」と付いている。121分の北米公開版と92分の国際版があるため、121分のほうを、オリジナル完全版と呼称している。

本作自体が、1953年のフランス映画版のリメイクであって、オリジナルといってもフランス版を指しているのではない。


四人の「お尋ね者」が、二人ずつ、二台のトラックで、ニトログリセリンを運ぶ道中の物語であるが、本作品は、冒頭から順に、今日にいたるまでのその四人のエピソードが流され、ニトロ運搬は後半の展開となっている。


ジャングルに囲まれた南米ポルベニールのとある町に行き着いたのは、ドミンゲス(ロイ・シャイダー)、セラーノ(ブリュノ・クレメール)、ニーロ(フランシスコ・ラバル)、マルティネス(アミドウ)の四人で、この町には、他にも多くの犯罪者や与太者が流れてきていた。みな、ほとんどカネももってない。

300マイルも離れた山の上の油田の火災を消すために、石油会社は、ニトロの爆風を利用することになり、志願者を募った結果、この四人が選ばれることになったのである。


ストーリー上、前半を使って、四人について説明を加えたのは、それなりにありがたいが、いわゆるブツ切れを並べた脚本は、もう少し何とかならなかっただろうか? 多少のキャラ説明やポルベニールに流れ着くまでの経緯を入れながら、運搬シーンに移し、運搬中の回想として、手短に過去を挿入することもできただろう。


見せ場はやはり、運搬中の困難さだ。落ちそうな橋を渡るシーンや、大木を爆破するシーンなど、俳優自身にも肉体労働をさせ、ジャングルのなかで何日も撮影を行った苦労は偲ばれるが、ここに、それぞれの過去や思い出を挿入することができれば、さらに重厚なストーリー展開になったのではないか。


結果的に、ドミンゲスだけが生き残り、依頼主側のコーレット(ラモン・ビエリ)から旅券などを受け取り、その顔のアップ画像が撮られ、ほっとしたのも束の間、マフィア二人がやってきて店内に入り、発砲音がしたことで、ドミンゲスも殺されたことが知らされる。


もともとお尋ね者の四人ではあり、死んでしまって帳尻の合う気もするが、それぞれの死はいずれも不条理なものである。パリにいる妻に宛てたセラーノの手紙も、ドミンゲスが殺されたことで、届かなくなってしまった。

前半全部を使って四人の横顔を描くのであれば、運搬中のアクションと引き合うように、各自の個人の思いを、後半に挿入したほうがよかっただろう。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。