映画 『ちいさな独裁者』

監督・脚本:ロベルト・シュヴェンケ、撮影:フロリアン・バルハウス、音楽:マルティン・トートシャロウ、主演:マックス・フーバッヒャー、2017年、119分、ドイツ映画、原題:Der Hauptmann(大尉)


1945年4月、第二次世界大戦末期ドイツで、ひとりの脱走兵ヴィリー・ヘロルト(マックス・フーバッヒャー)は、軍に追われていた。何とか逃げて木の根っこにじっと隠れている間に、あたりに人の気配がしなくなった。あてもなく歩いていると、道端に乗り捨てられた軍用車を見つけ、中を見ると、大型のトランクに、きれいなままの軍服があった。ぼろぼろになった服や靴を脱ぎ、履き替え、真新しい制帽をかぶったところに、ひとりの軍人フライターク(ミラン・ペシェル)がやってきた。フライタークは、泥にはまった車を動かす。ヘロルトの来ていた軍服は、大尉の軍服だった。その後、ヘロルトは、将校でもある大尉のふりをし、独裁的な行動をとっていく。・・・・・・


1945年に、ヴィリー・ヘロルトという21歳の兵卒が、実際に引き起こした事件を元にした話である。


最初のシーンで、1945年4月、ドイツ、戦争末期、と出る。また、タイトルが出るのは、スタートしてから24分経ってからで、ヘロルト=大尉を示した後である。


ストーリーとして、初めから興味を引く内容で、それだけで得をした映画だ。途中、立ち寄る脱走兵キャンプでは、総統であるヒトラーの命で動いているという嘘を最大限に利用し、即決裁判をおこない、囚人たちを皆殺しにまでする。このあたりが圧巻になるので、最後をそう終息させるかに関心がいく。元の話どおり、ヘロルトは有罪の判決を受ける。ラストに向け、それまでの勢いが失せてしまうが、元になった話どおりなのだから、それはしかたないだろう。が、もうひと捻り、ほしかった。


カメラは実に丁寧に撮っている。冒頭から、色を落としたフィルターをかけ、寒々とした雰囲気を漂わせている。戦闘中のドイツ国内ではあるが、冒頭に戦争末期と出ているからには、ドイツは敗色濃厚な時期であり、映像は、そういう時期から自然に想起されるカラーであり、違和感がない。

屋外シーンは多いのは当然でもあるが、処刑後の酒盛りのシーンなども、へたに個人だけのシーンをあまり映さず、あくまで、ヘロルトと部下たちの集団という図式を崩さなかったのはよかった。


ヘロルト役のマックス・フーバッヒャーは、撮影時24歳とのことだが、なかなか演技力がある。自分が脱走兵であるのに、脱走兵を詰問し、射殺するときの一連の表情はうまかった。自分が脱走兵として捕まっていれば、同じような目に合うのである。


キピンスキー役は、どこかで見た顔だと思ったら、『THE WAVE ウェイヴ』(2008年)にティム役で出たいたフレデリック・ラウ。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。